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ストーリー

1969年。暴力で世界を変えられると信じた若者たちがいた時代。東大安田講堂事件を契機に、全共闘運動が急激に失速していった時代。

写真:集会で演説する東大全共闘議長・唐谷(からたに)。
全共闘と書いた白いヘルメットをかぶり、顔を隠すタオルをまいている。東都新聞社で「週刊東都」の記者として働く沢田雅巳は、取材対象である当事者たちの志を共有したいという感情と、ジャーナリストたるものに必要とされる客観性の狭間で葛藤する日々を送っていた。ある日、沢田は先輩記者の中平から、指名手配中の東大全共闘議長・唐谷を日比谷で開催される全共闘結成大会まで連れてくる、という任を受ける。「失敗すれば逃走援助で、自分も罪に問われる」明らかにジャーナリズムの境界線を越えていることを自覚しながら唐谷を送り届けた沢田は、集会の狂騒に包まれて胸を熱くする。

1970年。日本大学の教室では、“哲学芸術思潮研究会”と称するサークルの討論会が行われていた。 壇上で気炎をあげる片桐優と、その横で片桐を支持する柴山。
「行動しない組織はナンセンスだ。俺は間違ってない。俺は一人でもやるぞ!」
正論なのか? 詭弁なのか?片桐が発する奇妙なエネルギーに、傍聴していた学生の重子と七重は、思わず惹きつけられていた。

忙しい沢田の束の間の楽しみは、週末にオールナイトで映画を観ることだった。 日曜の誰もいないオフィスで、沢田は「週刊東都」の表紙モデルである高校生・眞子に出会う。無邪気な笑顔の奥に大人びた感性を秘める眞子に、沢田は興味を覚える。

1971年。全共闘はもはや崩壊の一途をたどり、大衆の支持を失った一部の活動家はより直接的な武力闘争へと突き進み始めていた。
そんな時、中平が“京西安保”という組織の幹部を名乗る男からタレコミを受ける。
沢田は、中平とともに、人目に触れない自宅の離れで、梅山(実は片桐)と名乗るその男の取材を試みた。「武器を奪取し4月に行動を起こす」と意気揚揚と語る梅山を、中平は“偽者”だと断じる。しかし、梅山と部屋に残された沢田は、「宮沢賢治論」を読み、傍らのギターを手にCCRの「雨を見たかい」を口ずさむ梅山に、過激派らしからぬ親近感を覚える。
「梅山君は何で運動やろうと思ったの?」
「安田講堂をテレビで見てこれだ、と思ったんです」
「俺は苦しかったな。報道側から見てたけど、同じ大学の奴らが負けてくのを安全地帯から黙って見てるっていうのは」
「沢田さんて優しすぎますよ」
二人は確かに、同時代の共感の中に生きていた。

そんな時、新左翼雑誌として先陣を切っていた「東都ジャーナル」の編集部に、大幅な人事異動辞令が出され、沢田も「週刊東都」から「ジャーナル」へ異動になる。憧れだった「ジャーナル」には、しかし、かつてのような全共闘運動を援護する硬派な姿勢はかけらも見られなくなっていた。それでも、梅山への好奇心から接触を続けていた沢田は、京大全共闘のカリスマ・前園勇と梅山を引き合わせる。前園の強烈な個性と巧みな話術、独自の革命理論に、どんどん引き込まれていく沢田と梅山。

その頃、沢田は眞子と一緒に映画館に通うようになっていた。「どこがよかった?」と聞く沢田に、眞子は言う。「ジャック・ニコルソンが泣くところ。私は、きちんと泣ける男の人が好き」

一方で、梅山と柴山、重子と七重は、小さなアパートの一室を“アジト”にして共同生活を送っていた。「いつか行動を起こす」と言い張る梅山。それを疑う七重。七重を諌めながらも確信が持てない柴山。梅山と恋愛関係になっている重子。“赤邦軍”と名付けられた小さな“組織”は、少しずつ均衡を崩し始めていた。

写真:アパートの狭い部屋で向かい合って立つ梅山と沢田。沢田はカメラを持っている。畳の上には「赤邦軍(せきほうぐん)」と書かれた赤いヘルメットが数個置かれている。ある日、沢田は中平に呼び出され、警告を受ける。「梅山、やっぱり京西安保じゃないらしい。もうあいつには近づくな」沢田は梅山の正体を突き止めようとするが、梅山は自分が“本物”である証拠を見せると言い、沢田を連れてアジトへ向かう。赤く塗られたヘルメット、アジビラ、そして包丁・・・準備品に向かって黙々とシャッターを切る沢田。包丁を手にして殺気立った梅山が言う。「『真夜中のカーボーイ』って、観た? ダスティン・ホフマンが泣くの、 たまんなくて・・・あれは僕だ。行動に移る時、僕も“こわい、こわい”って思う」沢田はことを起こす時には独占取材をさせてくれと頼み、梅山はそれを了承した。

ある朝、自衛官の殺害事件をテレビのニュースが報じる。画面には、梅山のアジトにあった“赤邦軍”のヘルメットが映っている。遂に梅山の組織が行動を起こしたのだ。翌日、沢田は梅山と面会する。「君がやったという証拠を見せてくれ」梅山は、血が付いた自衛官の腕章を袋から取り出し、それを沢田に託した。スクープがとれたと思う沢田。しかし、会社はこの事件を“政治犯が起こした殺人事件”ではなく“一般の殺人事件”と断定した。沢田は、警察へ梅山の情報を提供することを求められるが、それはすなわちジャーナリストのモラルである“取材源秘匿の原則”を破り、自分を信じて取材させてくれた梅山を裏切ることを意味する。決断を迫られる沢田。危機に立たされる梅山。沢田は問いかける。
「君らが目指したものって何なんだ? 君は誰なんだ?」

何かを信じたかった、そして、何者かになりたかった二人の運命は、果たしてどこへ向かうのか

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